腸内細菌叢とがん治療
イノベーションの実現やがん患者さんのための新たな治療法の発見にあたっては、時として「直感(gut)」に頼らなければならないこともあります。
先般、ブリストル マイヤーズ スクイブとパリを拠点とするエンテローム・バイオサイエンス社が発表した新たなコラボレーションは、正にその「腸(gut))に注目したものです。
この提携に基づき、ブリストル マイヤーズ スクイブの新たな免疫療法の開発における知見と、エンテローム社の独自技術であるメタゲノム技術プラットフォームおよび急速に進歩を遂げる腸内細菌叢研究におけるリーダーシップを組み合わせて、新たな免疫療法薬やバイオマーカーの発見を目指します。
「私たちは、がんとの闘いに免疫系の働きを利用することに関して当社が持つ強固な基盤に、急速に進歩する科学やテクノロジー、研究を応用することによって、がん免疫療法が持つ可能性を最大限に生かす方法を追求し続けます。エンテローム社の知見は、がん患者さんの予後を改善するという目標に向けてさらに前進するのに役立つことでしょう」と、ディスカバリー部門責任者のカール・デチッコ(Ph.D.)は話します。
科学的エビデンスが蓄積されてきた腸内細菌叢が、当社のオンコロジー・ディスカバリー・チームが優先して取り組むべき重要領域として特定されたわけです。これは、がん免疫療法に対する奏効と耐性に関して進行中のほかの研究とも整合性を保ち、当社の事業開発戦略とも整合性のとれた提携です。
ビジネス・デベロップメント部門責任者のポール・ビオンディは、次のように述べています。「当社は、事業開発を通じて、戦略的にイノベーションを生み出してきました。エンテローム社が腸内細菌叢の研究に対して独自のアプローチをとっていることもあり、進展めざましい重要な科学領域におけるこの提携に研究開発チームと共に取り組めることを楽しみにしています」
腸内細菌叢とは?
バクテリア、菌類、ウイルスなど、人間の体の表面や内部に存在する全ての微生物は、微生物叢という集団を構成しています。人間の体内において、最も大きい細菌集団は腸に存在します。それが、100兆の微生物から成る腸内細菌叢です。
科学者たちが探求を進めるこの領域では、最近の研究によって、腸内細菌とヒト宿主との驚くべき共生関係が解明されています。代謝を調整したり、脳内の化学物質分泌へ影響を及ぼしたり、病原菌に対する障壁として機能したり、さらには免疫系を調整するなど、この共生関係の重要な役割が明らかになったのです。
微生物叢とがんの関連性
これまでに発表された研究によると、腸内細菌叢は、がん免疫療法に対する奏効と耐性のメカニズムの調節において重要な役割を果たしています。がんに対する免疫応答を増強する可能性を持つ標的や生物活性化合物の特定に、腸内細菌叢に起因する免疫系の変化を活用できるかもしれないのです。
このコラボレーションの詳細については、こちらのプレスリリースをご覧ください。