プレスリリース
インスリンにdapagliflozinを追加投与することにより、インスリンでは血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者の血糖管理を改善
2010/07/01
本資料は、米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社と英国アストラゼネカ社が、6月 26日(米国現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に再編集したものです。内容とその解釈については原文である英文が優先します。
(フロリダ州オーランド、2010年6月26日)-ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(本社:米国ニューヨーク州、CEO:ランベルト・アンドレオッティ)とアストラゼネカ社(本社:イギリス・ロンドン、CEO:デビッド・ブレナン)は共同で、経口糖尿病治療薬(OAD)の併用の有無に関わらずインスリン治療を受けているが十分な血糖コントロールが達成できていない2型糖尿病患者に対し、開発中の糖尿病治療薬dapagliflozinを24週間追加投与する第Ⅲ相臨床試験を実施しました。その結果、プラセボ群に比べdapagliflozin群では、主要評価項目であるグリコヘモグロビン(HbA1c)値のさらなる低下が認められました。また、副次評価項目である、全体重、インスリンの1日平均用量、および、空腹時血糖値(FPG)のベースラインからの変化においてもdapagliflozin群において低下が認められました。有害事象、重篤な有害事象、および、試験中止に関しては、すべての介入群において概して同程度に発生しました。尿路感染症や生殖器感染症を示唆する兆候、症状、その他の報告は、プラセボ群に比べdapagliflozin群の方が高頻度に認められましたが、試験中止に至るものはほとんどありませんでした。24週間投与の本臨床試験結果は、第70回米国糖尿病学会(ADA:American Diabetes Association)の年次学術会議で発表されました。
Dapagliflozinは、ファーストインクラスになりえるナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤であり、1日1回投与の経口血糖降下薬として、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とアストラゼネカ社が第Ⅲ相臨床試験の共同開発を進めています。SGLT2阻害剤は、腎臓によるグルコースの再吸収を抑制し、血糖値を低下させます。
イギリスのエイントリー大学病院の糖尿病・内分泌臨床研究部長を務めるジョン・ワイルディング医学教授兼名誉顧問医師(DM、FRCP)は、次のように述べています。「インスリン治療を受けている多くの2型糖尿病患者は、目標とする血糖値を達成できていません。本日発表された血糖・体重パラメータに関する第Ⅲ相試験結果から、dapagliflozinについて、この患者群に対するさらなる研究が進められることは確実です。」
ADA学術会議では、同試験の48週間にわたる追跡調査のデータについても最新情報として発表される予定です。
本臨床試験について
この臨床試験は、HbA1c値が7.5%から10.5%(ベースラインのHbA1c平均値は8.5%)のインスリン治療によっても血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者(18~80歳)800人を対象としたプラセボ対照ランダム化二重盲検試験です。経口糖尿病治療薬の併用の有無に関わらず、少なくとも8週間にわたって平均用量30 IU以上(ベースラインの平均用量:1日当たり77 IU)のインスリン治療で血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者において、dapagliflozinを追加投与した際の有効性と安全性を評価するために計画されました。組み入れられた患者はdapagliflozin 2.5 mg(n=202)、dapagliflozin 5 mg(n=211)、dapagliflozin 10 mg(n=194)、またはプラセボ(n=193)の4つの介入群のいずれかに均等にランダムに割り付けられました。
試験の主要評価項目は、24週後の時点における各dapagliflozin群のベースラインからのHbA1c平均変化量をプラセボ群と比較することでした。副次的評価項目は、全体重のベースラインからの変化量、インスリンの1日平均用量のベースラインからの変化量、および空腹時血糖値(FPG)のベースラインからの変化量でした。
試験結果
第24週の時点におけるHbA1cのベースラインからの平均変化量は、プラセボ群では0.30%の低下であったのに対し、dapagliflozin 2.5 mg群では0.75%の低下、5 mg群では0.82%の低下、10 mg群では0.90%の低下となり、統計学的に有意な減少が認められました(全介入群についてp値は0.0001以下)。
Dapagliflozinが全体重に与える影響についての評価も行われ、第24週の時点における全体重の平均変化量は、プラセボ群では0.02 kgの増加であったのに対し、dapagliflozin 2.5 mg群では0.98 kgの減少、5 mg群では0.98 kgの減少、10 mg群では1.67 kgの減少となりました(全介入群についてp値は0.0001以下)。
Dapagliflozin群では、第24週の時点におけるインスリンの1日用量も減少し、プラセボ群では1日当たり5.08 IUの増加であったのに対し、dapagliflozin 2.5 mg群では1.80 IUの減少、5 mg群では0.61 IUの減少、10 mg群では1.16 IUの減少となりました(全介入群についてp値は0.0001以下)。
副次的評価項目である第24週の時点の空腹時血糖値に関しては、プラセボ群では3.3 mg/dLの上昇であったのに対し、dapagliflozin 2.5 mg群では12.5 mg/dLの低下、5 mg群では18.8 mg/dLの低下、10 mg群では21.7 mg/dLの低下となりました(p値は、dapagliflozin 2.5 mg群で0.0008、dapagliflozin 10 mg群で0.0001以下、dapagliflozin 5 mg群のp値は試験手順により評価しませんでした)。
有害事象、重篤な有害事象、および試験中止は、すべての介入群で概して同程度に認められました。5%以上の患者でみられた最も一般的な有害事象の発生割合は、dapagliflozin 2.5 mg群、5 mg群、10 mg群、プラセボ群の順に、鼻咽頭炎が13.9%、13.7%、8.7%、11.2%、高血圧が5.4%、6.1%、3.6%、7.6%、頭痛が4.0%、4.2%、1.0%、7.1%、背部痛が4.5%、1.9%、4.6%、5.1%、上気道感染症が2.5%、2.8%、3.1%、5.1%でした。
尿路感染症や生殖器感染症を示唆する兆候、症状、その他の報告があった患者の割合は、プラセボ群よりもdapagliflozin群の方が高い傾向にありました。尿路感染症を示唆する事象は、プラセボ群の2.0%に対して、dapagliflozin 2.5 mg群では5.9%、5 mg群では7.5%、10 mg群では7.7%でみられました。生殖器感染症を示唆する事象は、プラセボ群の2.0%に対して、dapagliflozin 2.5 mg群では5.4%、5 mg群では8.0%、10 mg群では9.2%でみられました。
低血糖症は、プラセボ群の42.1%に対して、dapagliflozin 2.5 mg群では55%、5 mg群では47.6%、10 mg群では44.9%で報告されました。これらの低血糖症のうち1%が重度であり、どの介入群にも同程度に認められました。
起立性低血圧の兆候を伴わない血圧の低下がみられました。
2型糖尿病について
2型糖尿病は、血糖(血中グルコース)値の上昇を特徴とする複雑な進行性の疾患であり、しばしば肥満、高血圧、脂質異常症などの合併症を伴います。患者の半数近くが、現在の治療法では十分な血糖コントロールを達成しておらず、重大なアンメット・ニーズが存在しています。
腎臓は、体内の血糖値を総合的に制御する重要な役割を担っていますが、この役割についてはあまりよく知られていません。通常、健康な人では、腎臓で大量のグルコースが濾過され、実質的にそのすべてが能動的に再吸収されます。グルコースの再吸収は、カロリーを体内に保持するために必要ですが、2型糖尿病患者では逆効果となります。2型糖尿病患者では血糖値が高く、通常よりも多量のグルコースが腎臓において濾過、再吸収され、それにより高血糖がさらに持続することになります。
こういった持続性の高血糖は、時間とともにインスリン抵抗性を悪化させるとともに、膵臓のβ細胞の機能を低下させ、この疾患のコントロールをさらに困難にします。また、高血糖の持続は、失明などの糖尿病性微小血管合併症にも直接関連し、心筋梗塞、脳梗塞などの大血管合併症の一因にもなります。
SGLT2阻害剤について
腎臓は、常に腎糸球体でグルコースを濾過していますが、ほぼすべてのグルコースは再吸収されます。SGLT2と呼ばれるタンパク質は、グルコース再吸収の大半を担い、身体が必要とするエネルギーのためにグルコースを保持するのを助けます。糖尿病患者の場合、この経路によって過剰なグルコースが保持されると高血糖の持続につながります。SGLT2の作用を抑制すると、腎臓からのグルコースの再吸収が阻害され、尿中にグルコースが排泄されます。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とアストラゼネカ社の提携について
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とアストラゼネカ社は2007年1月、2型糖尿病の特定の治験薬を研究、開発、そして販売する提携を開始しました。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社について
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、深刻な病気を持つ患者さんを助けるための革新的な医薬品を発見、開発し、提供することを使命とする世界的なバイオファーマ企業です。詳細については、www.bms.com<米国本社のウェブサイト(英語)>または、ツイッターでhttp://twitter.com/bmsnewsをご覧ください。
アストラゼネカ社について
アストラゼネカは、イノベーション指向かつバイオ医薬品も含むグローバル製薬企業であり、主に医療用医薬品の創薬、開発およびマーケティング・営業活動に従事しています。アストラゼネカは消化器・循環器・ニューロサイエンス・呼吸器・オンコロジーおよび感染症領域におけるリーディングカンパニーで、2009年の全世界の売上は328億ドル、米国での売上は148億ドルでした。詳細については、Webサイト(www.astrazeneca-us.com)をご覧ください。
- *dapagliflozinは、現在日本で第II相臨床試験を実施中です。
将来予測等に関する記述
本ニュースリリースは、製品の開発に関して、1995年私募証券訴訟改革法で定義されるところの将来予測に関する記述を含んでいます。そうした将来予測に関する記述は現在の予想に基づくものであり、遅延、転換または変更を来たす内在的リスクと不確実性を伴っており、実際の成果または業績が現在の予想と大きく異なる結果となる可能性があります。将来予測に関する記述は保証できるものではありません。特に、dapagliflozinが規制上の承認を受ける、また承認を受けたとしても商業的に確実に成功するという保証はできません。本ニュースリリースの将来予測に関する記述は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の事業に影響を与える不確定要素、特にブリストル・マイヤーズ スクイブ社の2009年度通期報告書(Form 10-K)、四半期報告書(Form 10-Q)および当期報告書(Form 8-K)にリスク要因として記されている不確定要素と共に評価されるべきです。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、新たな知見、今後の出来事の結果を問わず、一切の将来予測等に関する記述について、公に更新する義務を負うものではありません。
本ニュースリリースに関するお問合せ先
ブリストル・マイヤーズ株式会社
コーポレイト/ビジネス・コミュニケーションズ部門
電話:(03)5323-8314
アストラゼネカ株式会社
広報部
電話:(06)6453-8011
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ブリストル・マイヤーズ株式会社は、「より長く豊かな人生の実現」をミッションとする世界的なバイオ医薬品企業です。詳細については、http://www.bms.co.jp/をご覧ください。
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