プレスリリース
開発中のapixabanがワルファリン不適応の心房細動患者に対する脳卒中と全身性塞栓症の抑制でアスピリンよりも優れていることが、AVERROES試験の新たなデータで判明
2011/02/18
第III相試験結果がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載
本資料は米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社と米国ファイザー社が、2月10日(米国現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に抄訳したものです。内容とその解釈については原文である英文が優先します。
(ニュージャージー州プリンストン、ニューヨーク州ニューヨーク)-ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とファイザー社は本日、apixabanに関するAVERROES試験の最終結果がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載されたことを発表しました。36カ国で実施された同試験は、ポピュレーション ヘルス リサーチ インスティテュート(PHRI:Population Health Research Institute)(マックマスター大学及びハミルトン ヘルス サイエンス(Hamilton Health Sciences)、カナダ)のによって取りまとめられました。同試験から、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤(VKA)治療が不適応と予測または確認された心房細動(AF)患者において、apixabanは、脳卒中及び全身性塞栓症の有効性の複合評価項目において、大出血、致死的出血、頭蓋内出血の有意な増加をもたらすことなく、脳卒中や全身性塞栓症をアスピリンより統計的に優位に軽減しました。重要な点として、出血性脳卒中のリスクに関して、apixabanとアスピリンに有意な差は認められませんでした。また試験結果から、心房細動患者の脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、または血管系のイベントによる死亡の低減という副次的有効性評価項目に関して、apixabanがアスピリンよりも優れることも明らかになりました。
アスピリンは、ワルファリンまたはその他のVKAによって許容できない出血リスクが生じることが確認または予測された患者における治療オプションとして用いられています。今回の試験は、この患者群により適したオプションを探るために設計されました。
心房細動は、最も一般的な持続性不整脈であり、米国では約510万人、欧州では600万人以上に影響を及ぼしています(*1,*2)。40歳以上の人口では、心房細動の生涯リスクは4人に1人と推定されています(*3)。心房細動の基本的な脅威は脳卒中リスクの上昇であり、心房細動患者では、心房細動を発症していない人と比べて脳卒中リスクが5倍に高まります。実際に米国では、脳卒中全体の15%が、心房細動が原因で発生しています(*4)。
新規開発中のapixabanは、経口投与可能で、高い選択性を持つ第Xa因子阻害剤であり、静脈と動脈中の血液凝固を予防・治療する可能性について治験が実施されています。AVERROES試験の予備的結果は、2010年8月にスウェーデン・ストックホルムで開催されたヨーロッパ心臓病学会(ESC:European Society of Cardiology)の年次会議で初めて発表されました。最終結果は、本日ロサンゼルスで開催される国際脳卒中学会でも発表されます。
同試験の治験責任医師を務めたDr. Stuart Connolly (内科学教授、McMaster University, Hamilton, Canada)は、次のように述べています。「心房細動関連の脳卒中は特に重篤になる傾向があるため、心房細動患者さんにとって、脳卒中や全身性塞栓症のリスクは大きな問題です。AVERROES試験のデータから、apixabanが大出血のリスクを有意に増加させることなく、アスピリンよりも優れた効果を持つことが明らかになったのは喜ばしいことです。ビタミンK拮抗剤による治療が適さない患者さんが多いことを考えると、安全かつ有効な新しい治療オプションを確保することは特に重要です。」
AVERROES試験について
AVERROES試験(Apixaban Versus Acetylsalicylic Acid to Prevent Strokes:apixabanとアセチルサリチル酸の脳卒中予防に関する比較)は、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤による治療が不適応と予測または確認された、脳卒中リスクを抱える心房細動患者5,599人が参加した多施設共同のランダム化二重盲検比較試験です。被験者の平均CHADS2リスクスコアは2.0でした。患者は、apixaban 5mgの1日2回投与群とアスピリン81mg~324mgの1日1回投与群のどちらかに無作為に割り付けられました。
脳卒中または全身性塞栓症の主要有効性評価項目に関し、apixabanはアスピリンよりも優れることが明らかになりました(P<0.001)。相対リスク減少は55%であり、ITT解析における年間のイベント発生率はapixaban群で1.6%、アスピリン群で3.7%でした。
主な副次的有効性評価項目は、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、または血管系のイベントによる死亡と定義されました。相対リスク減少は34%であり、ITT解析における年間のイベント発生率はapixaban群で4.2%、アスピリン群で6.4%でした。また、apixaban群では、アスピリン群と比較して、心血管系を原因とする入院が統計的有意に減少しました(apixaban群12.6%に対し、アスピリン群15.9%、P<0.001)
また、AVERROES試験の結果から、大出血、致死的出血、頭蓋内出血に関し、apixabanとアスピリンに有意な差は認められないことが明らかになりました。大出血の年間発生率は、apixaban群で1.4%、アスピリン群で1.2%であり、ITT解析において統計的有意ではありませんでした(P=0.57)。on-treatment解析では、それぞれ1.4%、0.9%であり、同じく統計的有意差はみられませんでした(P=0.07)。
この試験では、apixaban群の方がアスピリン群よりも中止率は有意に低くなりました(P=0.03)。またapixabanに関連して、肝毒性の兆候は見られませんでした。
心房細動の管理について
治療ガイドラインでは、心拍数と洞調律の治療に加え、脳卒中リスクが高い心房細動患者に対し、ワルファリンなどのビタミンK拮抗剤(VKA)による抗凝固療法を推奨しています(*5)。しかしながら、先進国における診療パターンの調査から、中~高程度の脳卒中リスクを持つ心房細動患者の40~50%がビタミンK拮抗剤の投与を受けていないことがわかりました。心房細動患者にビタミンK拮抗剤が投与されない最も一般的な理由は、出血に対する懸念のようです。その他の懸念として、ワルファリンの治療用量を管理・維持しにくいことや、ワルファリン治療と干渉する他の処方薬を使用していることなどがありました(*6)。現在、心房細動患者の管理のためのガイドラインでは、VKAを投与できない場合はアスピリンを使用することが推奨されています(*5)。
Apixabanの臨床試験プログラムについて
Apixabanについては現在、EXPANSE臨床試験プログラムで研究が進められています。同プログラムは、複数の適応および患者群にわたって世界全体で6万例近くの患者を対象に実施されており、AVERROESを含め、完了済みまたは実施中の合計9つの第3相ランダム化二重盲検試験から構成されます。
AVERROES試験は、心房細動患者の脳卒中予防に関してapixabanの有効性と安全性を調査する2件の第III相臨床試験のうちの1件です。進行中のARISTOTLE試験では、18,206例の心房細動患者においてapixabanをワルファリンと比較する調査が行われています。この試験結果は、今年中に主要な医学学会で発表される予定です。
Apixabanについては、心房細動患者の脳卒中およびその他の血栓塞栓イベント予防に加え、静脈血栓塞栓症(VTE)の予防および治療に関する第III相臨床試験でも評価が行われています。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社とファイザー社の提携について
2007年、ファイザー社とブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社によって発見された経口抗凝固剤であるapixabanの開発および販売に関し、世界的な提携契約を締結しました。この世界的提携によって、長年にわたるブリストル・マイヤーズ スクイブ社の心血管疾患治療薬の開発および販売の実績と、この領域におけるファイザー社のグローバルな規模および専門知識を結集することになります。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社について
ブリストル・マイヤーズ スクイブは、深刻な病気を持つ患者さんを助けるための革新的な医薬品を発見、開発し、提供することを使命とする世界的なバイオファーマ企業です。詳細については、www.bms.com<米国本社のウェブサイト(英語)>をご覧ください。
ファイザーについて:より健康な世界の実現のために
ファイザーでは、あらゆるライフステージにおける健康と福祉の向上を目指し、科学、そして当社のグローバルのリソースを活用しています。ヒト、動物用の医薬品の発見、開発および製造における品質、安全性、価値に関して高い基準を設ける努力を続けています。当社の多角化したグローバルなヘルスケア製品のポートフォリオには、ヒト、動物用の生物学的製剤および低分子化合物、ワクチンと共に、栄養管理製品や世界でも知名度の高い多くの一般消費者向けの製品が含まれています。毎日の生活のなかで、ファイザー社のスタッフは先進国や新興国市場で業務に携わり、今の時代に最も恐れられている病気と闘うため、福祉、予防、治療などの進歩に努めています。世界をリードするバイオ医薬品企業としての責務を果たすべく、当社は医療従事者、政府、そして地域のコミュニティと協力して、世界中で信頼性が高く適切なヘルスケアを支援し拡大していきます。150年以上もの間、ファイザーは当社を信頼してくださる全ての方々のために、少しでもよい結果をもたらすことができるように事業に取り組んで参りました。当社の取り組みの詳細はホームページをご覧ください。www.pfizer.com(Pfizer Inc)
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の将来予測等に関する記述
本ニュースリリースは、製品の開発に関して、1995年私募証券訴訟改革法で定義されるところの将来予測に関する記述を含んでいます。そうした将来予測に関する記述は現在の予想に基づくものであり、遅延、転換または変更を来たす内在的リスクと不確実性を伴っており、実際の成果または業績が現在の予想と大きく異なる結果となる可能性があります。将来予測に関する記述は保証できるものではありません。特に、apixabanが規制上の承認を受ける、また承認を受けたとしても商業的に確実に成功するという保証はできません。本ニュースリリースの将来予測に関する記述は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社の事業に影響を与える不確定要素、特にブリストル・マイヤーズ スクイブ社の2009年度通期報告書(Form 10-K)、四半期報告書(Form 10-Q)および当期報告書(Form 8-K)にリスク要因として記されている不確定要素と共に評価されるべきです。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、新たな知見、今後の出来事の結果を問わず、一切の将来予測等に関する記述について、公に更新する義務を負うものではありません。
- (*1)Miyasaka Y et al. Secular Trends in Incidence of Atrial Fibrillation in Olmsted County, Minnesota, 1980 to 2000, and Implications on the Projections for Future Prevalence. Circulation. 2006;114:119-125.
- (*2)Kannel WB, Benjamin EJ. Status of the Epidemiology of Atrial Fibrillation. Med Clin N Am. 2008; 92: 17-40.
- (*3)Kirchhof P, Adamou A, Knight E, et al. How can we avoid a stroke crisis? Working group report: stroke prevention in patients with atrial fibrillation.
- (*4)Go AS et al. Prevalence of Diagnosed Atrial Fibrillation in Adults National Implications for Rhythm Management and Stroke Prevention: the AnTicoagulation and Risk Factors In Atrial Fibrillation (ATRIA) Study. JAMA. 2001;285(18):2370-2375.
- (*5)Fuster V, Ryden LE, Cannom DS, et al. ACC/AHA/ESC 2006: guidelines for the management of patients with atrial fibrillation:a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the European Society of Cardiology Committee for Practice Guidelines (Writing Committee to Revise the 2001 Guidelines for the Management of Patients With Atrial Fibrillation): developed in collaboration with the European Heart Rhythm Association and the Heart Rhythm Society. Circulation. 2006;114:e257-e354.
- (*6)Eikelboom JW et al. Rationale and design of AVERROES: Apixaban versus acetylsalicylic acid to prevent stroke in atrial fibrillation patients who have failed or are unsuitable for vitamin K antagonist treatment. Am Heart J. 2010;159:348-353.