プレスリリース
直接作用型抗ウイルス剤のみを用いた治療の概念実証を行う初のC型慢性肝炎治療に関するデータが発表
2012/01/25
本資料は米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ社が、1月18日(米国現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に抄訳したものです。内容とその解釈については原文である英文が優先します。
- 本試験では、4剤併用療法についても投与終了後12週目に100%のウイルスの陰性化(SVR)を達成
- 第II相臨床試験成績が本日、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載される
(ニュージャージー州プリンストン、2012年1月18日)-ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(本社:アメリカ・ニューヨーク/CEO:ランベルト・アンドレオッティ)は本日、ペグインターフェロンアルファおよびリバビリンの前治療が奏効しなかった(「無効例」(*)の)ジェノタイプ1のC型慢性肝炎患者における第II相臨床試験の全成績がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン誌に掲載されたことを発表しました。本試験では、daclatasvirとasunaprevirを含む直接作用型抗ウイルス剤(DAA)のみを用いた併用療法によって、主要評価項目である、投与終了後12週目におけるウイルス陰性化を達成できる可能性が示されました(11例中4例、HCVジェノタイプ1bに感染した2例を含む)。この試験は、インターフェロンを使用せずにC型慢性肝炎を治癒(投与終了後48週目におけるウイルス陰性化(SVR48)と定義)できる可能性を示した初の試験です。また、本試験では、ペグインターフェロンアルファ、及びリバビリンに加え、daclatasvirとasunaprevirを含む4剤併用療法を受けたこれらの治療困難なC型慢性肝炎患者の全例(10例中10例)でSVR12を達成したことも示されました。
本試験では、投与中の重篤な有害事象や、有害事象による投与中止例はみられませんでした。両群で最も多くみられた有害事象は、下痢でした(DAAの2剤併用療法で73%、4剤併用療法で70%)。
アナーバーにあるミシガン大学医学部の臨床肝臓病学部長・内科学教授であり、治験責任医師を務めたアナ・ロック博士(MD、FRCP)は、「最近、2つのプロテアーゼ阻害薬が承認されましたが、ペグインターフェロンアルファおよびリバビリンが奏効しなかったC型肝炎患者の治療は、効果が限定的でした。このように満たされていない大きな医療ニーズが存在するため、無効例の治療効果を高める新たな併用療法が必要とされています。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の開発中のDAAであるdaclatasvirとasunaprevirを併用したこの試験のデータから、DAAの2剤併用療法または4剤併用療法のどちらでも、治療困難な患者さんたちのためにC型慢性肝炎の治療を前進させられる希望が得られました。また、この試験は、インターフェロンとリバビリンを使用せずにウイルスの陰性化を達成できることを実証した初の試験でもあります」と述べています。
Daclatasvirは、C型慢性肝炎を対象に臨床試験を実施中の初のNS5A阻害薬であり、現在、第III相開発段階にあります。Asunaprevirは、開発中の経口投与可能なNS3阻害薬です。
- (*)無効例-インターフェロンアルファおよびリバビリンによる前治療が奏効しなかった患者(12週目の時点でHCV RNAのベースラインからの減少が2log10未満の患者)
試験結果
ウイルスの陰性化:daclatasvirとasunaprevirのDAAの2剤併用療法(A群)
C型慢性肝炎患者11例が24週間のDAAの2剤併用療法にランダムに割り付けられました。A群では、11例のうち7例(64%)が4週目までにウイルス量検出限界未満を達成し、投与終了の時点で5例がこの状態を維持していました。これら11例のうち、1例が投与終了後4週目に再燃しましたが、4例(36%)が投与終了後12週目におけるウイルスの陰性化(SVR12)を達成しました。投与終了後48週間の追跡期間に、他の再燃例はみられませんでした。
ジェノタイプ1aのHCV患者6例において2剤併用療法で投与中にウイルスの再燃が認められ、再燃後のC型肝炎ウイルス配列を解析したところ、両方の抗ウイルス剤への耐性変異が確認されました。2剤併用療法にペグインターフェロンアルファとリバビリンを追加したところ(救済治療)、6例のうち4例でウイルス量が検出限界未満となりました。これらの患者のうち2例は投与期間終了後に再燃し、2例(1例は投与終了後14週目、1例は42週目の追跡期間中)はウイルス量の検出限界未満を維持していました。6例のうち2例は、HCV RNA量が検出限界未満を達成できず、投与が中止されました。
ウイルスの陰性化:daclatasvir、asunaprevir、並びにペグインターフェロンアルファ、リバビリンを投与する4剤併用療法(B群)
C型慢性肝炎患者が10例が24週間の4剤併用療法にランダムに割り付けられました。B群に割り付けられた10例中の6例(60%)が4週目までにHCV RNA量が検出限界未満となりました。10例中の10例(100%)で投与終了時までにウイルス量は検出限界未満となり、10例ともにSVR12を達成しました。投与後48週間の観察期間中に、ウイルスの再燃は認められませんでした。
安全性
本試験では、投与中の重篤な有害事象、死亡例、有害事象による投与中止は認められませんでした。ほとんどの有害事象は軽度から中等度のものであり、最も多く認められた有害事象は、下痢(A群:11例中8例, 73%、B群:10例中7例, 70%)、倦怠感(A群:11例中6例, 55%、B群:10例中7例, 70%)、頭痛(A群:11例中5例, 45%、B群:10例中5例, 50%)、嘔気(A群:11例中2例, 18%、B群:10例中5例, 50%)でした。
6例(A群では救済治療を受けた2例を含む4例、B群では2例)において、投与中止または投与中断を必要としない肝酵素上昇[正常上限値の3倍を超えるALTの上昇]がみられましたが、治験薬の投与継続によってすべての患者の症状が安定または改善しました。ペグインターフェロンアルファとリバビリンの投与を受けた患者の全員にあたる6例において、グレード3または4の好中球減少症(白血球数の異常な減少を特徴とする血球異常)が認められました。
本試験について
本前期第II相オープンラベル試験では、ペグインターフェロンアルファおよびリバビリン治療無効のジェノタイプ1のC型慢性肝炎患者21例において、両剤併用下、または非併用下で、daclatasvirとasunaprevirを併用した場合の抗ウイルス作用と安全性を評価しました。試験に参加した患者は、24週間にわたる2つの投与法のいずれかにランダムに割り付けられました。A群の患者11例は、daclatasvir 60mgを1日1回と、asunaprevir 600mgを1日2回経口投与するDAAの2剤併用療法を受けました。B群の患者10例は、daclatasvir 60mgを1日1回、asunaprevir 600mgを1日2回経口投与し、ペグインターフェロンアルファ 180 µgを週に1回、リバビリン 1000~1200mgを(体重に応じて)1日に2回分割投与する4剤併用療法を受けました。試験の主要目的は、投与終了後12週目にウイルス量検出限界未満(HCV RNA < 10 IU/mL)(SVR12)を達成した患者の割合を評価することでした。DAA 2剤併用療法は現在、第III相開発段階にあります。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の肝疾患への取り組み
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、C型肝炎、B型肝炎、肝がんを含むさまざまな肝疾患の満たされていない医療ニーズに対応するため、化合物ポートフォリオの進展に努めています。C型肝炎パイプラインには、さまざまな作用機序を持つ化合物ポートフォリオが含まれ、生物学的製剤と低分子抗ウイルス剤の両方に取り組んでいます。これらの化合物は、複数の新規治療法の一つとして患者タイプや地域にあわせてSVR率の向上を目的に開発されています。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のゲノミクスアプローチを通じて発見されたdaclatasvir (BMS-790052)は、C型肝炎を対象とした臨床試験で検討された初のNS5A阻害薬であり、現在、第III相開発段階にあります。またasunaprevir (BMS-650032)は、C型肝炎に関して第II相開発段階にあるNS3阻害薬です。
C型肝炎について
C型肝炎ウイルスは、肝臓に感染するウイルスであり、感染した血液または血液製剤に直接接触することによって感染します。世界で推定1億7,000万人がC型肝炎ウイルスに感染しており、ジェノタイプ1は最もよくみられる遺伝子型となっています。C型肝炎ウイルス感染者の90%までが、ウイルスを体内から排除できず、慢性的に感染しています。慢性C型肝炎患者の20%が肝硬変を発症し、そのうち25%までが肝がんに進行します。C型肝炎を予防するワクチンはありませんが、C型肝炎は治癒が可能な疾患です。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社について
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、深刻な病気を持つ患者さんを助けるための革新的な医薬品を発見、開発し、提供することを使命とする世界的なバイオファーマ企業です。詳細については、www.bms.com<米国本社のウェブサイト(英語)>、またはツイッター(http://twitter.com/bmsnews)をご覧ください。
ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の将来予測等に関する記述
本ニュースリリースは、医薬品の研究、開発、および販売について、1995年民間有価証券訴訟改正法の趣旨の範疇に含まれる「将来予測に関する記述」を含んでいます。そうした将来予測に関する記述は現在の予想に基づくものであり、遅延、転換または変更を来たす内在的リスクと不確実性を伴っており、実際の成果または業績が現在の予想と大きく異なる結果となる可能性があります。将来予測に関するいかなる記述も保証されるものではありません。たとえば、本リリースで説明した化合物が試験的開発段階から全面的な製品開発段階へ移行し、この化合物の臨床試験が規制当局への申請の裏づけとなり、あるいは、これらの化合物が規制当局の承認を受ける、また商業的に確実に成功するという保証はできません。本ニュースリリースの将来予測等に関する記述は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社の事業に影響を与える不確定要素、特にブリストル・マイヤーズ スクイブ社の2010年12月31日に終了した事業年度通期報告書(Form 10-K)、四半期報告書(Form 10-Q)および当期報告書(Form 8-K)にリスク要因として記されている不確定要素と共に評価されるべきです。ブリストル・マイヤーズ スクイブ社は、新たな知見、今後の出来事等に因るか否かを問わず、一切の将来予測等に関する記述について、公に更新する義務を負うものではありません。