ビッグデータの力を活用し、臨床的発見につなげる

     
サウラブ・サハ(M.D.、Ph.D.)トランスレーショナルメディシン部門シニアバイスプレジデント兼グローバルヘッド

研究者である私たちは、医学における新たな課題の解決を目指し、さまざまな分野で常にローデータを生成しています。腫瘍のDNA解析であれ、薬の体内動態のマッピングであれ、データと解析は、トランスレーショナルメディシン(疾患の生物学に対する理解を深め、治療に奏効する患者さんを識別することを目的とした研究)の中核を成し、複数の疾患領域における創薬プロセスの原動力となっています。

Saurabh Saha, M.D., Ph.D., Senior Vice President and Global Head of Translational Medicine

トランスレーショナルメディシンは、応用研究の複数の領域にまたがっており、研究室で得られたデータの迅速な解析と解釈、臨床試験における新たなインサイトの導入、パイプラインの開発加速を通じて、適切な患者さんに適切な治療を適切なタイミングで提供することを目指します。複雑なデータセットの生成、統合、解析および合成は、創薬と臨床開発の促進に資する実行可能なインサイトと試験可能な仮説を生み出す上で、最も重要な能力の一つです。

がん免疫領域では、当社のトランスレーショナル・バイオインフォマティクス・チームが、最先端のアルゴリズムを使用し、遺伝子の膨大なローデータをふるいにかけています。全エクソームシーケンス(WES)は、臨床試験の腫瘍や血液サンプルに関するデータを生成します。このデータを、腫瘍の変異や、正常組織の遺伝的変異の特定に活用することで、遺伝子や変異のパターンと治療薬への反応との相関性を明らかにし、患者さんの治療の決定に役立つ情報を得ることができます。ヒトゲノムには30億個を超える塩基対があることを考えると、不可能な取り組みに思えるかも知れませんが、新しい実験技術やコンピューター技術のおかげで、かつてないほど大量のデータを生成・解析できるようになりました。

トランスレーショナル・バイオインフォマティクスは、生物学、コンピューター科学、統計学、エンジニアリングを用いて、大量のローデータセットを解析し、有用な情報を抽出する学際的な分野です。

解析段階の前に、大量のデータを生成する上で技術プラットフォームの果たす役割を無視することはできません。イメージングおよび解析科学における進歩のおかげで、従来よりも正確かつ大量のデータを生成できるようになりました。血球計算や定量的PCR、病理学のような従来のプラットフォームは、次世代シーケンシング、高レベルの多重化、定量的デジタルパソロジー、機械学習によって強化されています。これらは、より高速なデータ生成だけでなく、多くの場合、従来は利用できなかったローデータへのアクセスを可能にします。

デジタルパソロジーは、デジタル化したガラス標本から病理学情報を取得、管理、解釈する、画像ベースのダイナミックな分野です。

私たちは、より合理的な臨床試験を設計し、安全かつ有効な治療薬を速いペースで開発するために、データを活用しています。例として、特定の治療薬が体内でどのように働き、他の薬とどのように作用し合うかを示す数学的モデルを用い、臨床試験における薬の反応を予測することが挙げられます。数十年かけてあらゆる組み合わせを個別に試験するのではなく、相性の悪いペアをあらかじめ排除し、最も成功する可能性の高い仮説に集中することができるのです。

データと解析の力は、私たちに多くの発見をもたらし、臨床開発プロセスにかかる時間を大幅に削減しました。これからも、私たちの取り組みは続きます。全ての患者さんにおけるプレシジョンメディシンの実現を目指し、私たちは常に、新しい技術や解析方法の発見と活用に取り組んでいます。